壁へのダメージを最小限に抑えながら、テレビや棚を設置できると人気の「壁美人」。
しかし、その手軽さの裏にあるリスクを懸念し、「壁美人で後悔したくない」と考えている方も多いのではないでしょうか。
特に、壁美人の使い方を誤った場合に起こりうるテレビの落下事故や、地震の際に本当に安全なのか、万が一壁から落ちた場合の被害など、心配は尽きません。
また、賃貸物件で利用を検討している方にとっては、設置がバレる可能性や、退去時の費用についても気になるところでしょう。
ニトリの棚のような家具の取り付けや、55インチといった大型テレビの設置が可能かどうかも、重要な判断材料になります。
この記事では、そのような不安を解消し、壁美人を安全かつ効果的に活用するための知識を網羅的に解説します。
失敗例から学び、正しい知識を身につけることで、壁美人のメリットを最大限に引き出しましょう。
- 壁美人でよくある失敗の具体的なケース
- 賃貸物件で壁美人を使用する際の注意点
- 重いものを安全に壁掛けするための条件
- 壁美人に関する様々な疑問への回答
壁美人で後悔する前に知りたい失敗例

- 壁美人が突然落ちたという口コミの真相
- テレビが落下する最悪のケースと原因
- 大地震がきたら壁美人は大丈夫なのか
- 壁美人は賃貸でバレると面倒になる?
- 賃貸の退去時にかかる費用について
壁美人が突然落ちたという口コミの真相
「壁美人が突然落ちた」という口コミを見かけることがありますが、その多くは製品の欠陥ではなく、使用方法に原因があるケースがほとんどです。
最も一般的な原因は、静止耐荷重を超えた重さのものを掛けてしまうことです。
壁美人のパッケージには必ず「静止耐荷重6kg」「12kg」といった表記があります。
これは、あくまで静止した状態での耐荷重であり、物を置いたり取ったりする際の衝撃は含まれていません。
特に棚を設置する場合、棚自体の重さに加えて、収納する物の総重量を計算に入れる必要があります。
また、ホッチキスの芯を正しく打ち込めていないケースも少なくありません。
壁美人は、ホッチキスの芯を石膏ボード内でクロスさせることで強度を保つ仕組みです。
芯が最後まで刺さっていなかったり、斜めに打ち込んでしまったりすると、十分な強度が発揮されず、落下の原因となってしまいます。
落下の主な原因
- 静止耐荷重の超過(載せる物の重さも考慮する)
- ホッチキスの芯の打ち込み不足や失敗
- 取り付けた壁が石膏ボードではなかった
- 設置物に対して金具の数が不足している
これらの失敗は、製品の公式サイトや説明書に記載されている基本的なルールを守ることで防ぐことが可能です。
口コミだけに惑わされず、まずは正しい使い方を理解することが、後悔しないための第一歩と言えるでしょう。
テレビが落下する最悪のケースと原因
壁美人を使用して最も避けたいのが、テレビの落下事故です。
高価なテレビが破損するだけでなく、床や他の家具を傷つけたり、最悪の場合は人が怪我をしたりする危険性も伴います。
テレビ落下の原因として最も多いのは、やはりテレビの重量と壁美人金具の静止耐荷重が見合っていないことです。
テレビを設置する場合は、必ず専用の「テレビセッター壁美人」を使用し、お使いのテレビの重量に対応したモデルを選ぶ必要があります。
例えば、近年の50インチを超える大型テレビは20kg近くになることも珍しくありません。
この場合、1枚あたりの耐荷重が低い金具を少数使って設置するのは非常に危険です。
金具の数を増やせば耐荷重も上がりますが、必ずメーカーが推奨する設置方法に従ってください。
テレビは一度設置すると動かすことが少ないため、「静止」していると思いがちです。
しかし、掃除の際に少し動かしたり、配線を変更したりする際に力が加わることも考慮し、耐荷重には十分な余裕を持たせることが重要です。
もう一つの原因として、壁の強度不足が挙げられます。
壁美人は石膏ボードの壁に特化した製品ですが、石膏ボード自体が古くなっていたり、湿気で脆くなっていたりすると、本来の性能を発揮できません。
設置前には、壁を軽く叩いてみて、空洞音だけでなく、しっかりとした詰まった音がするかを確認することも大切です。
大地震がきたら壁美人は大丈夫なのか
日本に住んでいる以上、地震への備えは欠かせません。
壁美人で設置したテレビや棚が、大地震の揺れに耐えられるのかは、多くの方が気にするポイントでしょう。
結論から言うと、正しく設置されていれば、ある程度の地震には耐えられると考えられます。
壁美人の公式サイトでは、震度6強相当の振動試験をクリアしたというデータが公開されている製品もあります。
メーカーの公式サイトによると、専門機関にて東日本大震災の地震波(震度6強相当)による振動試験を実施し、壁掛けテレビが落下しないことが確認されている、という情報があります。(参照:壁美人.net 公式サイト)
ただし、これはあくまで特定の条件下での試験結果であり、全ての地震に対して100%の安全を保証するものではありません。
地震の揺れ方(縦揺れか横揺れか)や建物の構造によって、壁にかかる負荷は大きく変わるためです。
より安全性を高めるためには、テレビの上部をワイヤーで壁や天井に固定するなど、落下防止の対策を二重に行うことを強く推奨します。
特に、寝室など、就寝中に物が落下してくる可能性のある場所への設置は、より慎重に検討すべきでしょう。
壁美人は賃貸でバレると面倒になる?
「壁美人は跡が目立たない」という点が、賃貸住宅にお住まいの方にとって最大の魅力です。
しかし、「本当にバレないのか?」「管理会社や大家さんから指摘されたらどうしよう」と不安に思う方もいるでしょう。
壁美人が残す跡は、ホッチキスの芯による直径1mm未満の小さな穴です。
これは、画鋲の穴よりも小さく、国土交通省のガイドラインでは「通常の使用による損耗」と見なされる可能性が非常に高いレベルです。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、画鋲やピン等の穴は、通常の生活において発生しうるものとして、基本的に貸主(大家さん)の負担とされています。
壁美人の穴はこれに準ずると考えられます。
そのため、退去時に壁美人の使用がバレて、高額な修繕費を請求されるというケースは稀です。
ただし、これはあくまで一般的な見解であり、賃貸契約書の特約事項に「壁への穴あけ一切禁止」といった記載がある場合は、話が別になります。
契約内容は事前に必ず確認しておきましょう。
万が一、穴が気になる場合は、市販の壁穴補修材(コーク剤など)で簡単に埋めることができます。
数百円程度で購入できるので、退去前にセルフメンテナンスしておくと、より安心です。
賃貸の退去時にかかる費用について
前述の通り、壁美人の使用が原因で退去時に高額な費用を請求される可能性は低いと考えられます。
正しく取り外せば、跡はほとんど目立ちません。
しかし、取り外しに失敗して壁紙を大きく剥がしてしまったり、重量物を落として床に傷をつけたりした場合は、原状回復費用を請求される可能性があります。
これは壁美人の問題ではなく、使用者の過失による損傷と判断されるためです。
費用が発生する可能性があるとすれば、以下のケースが考えられます。
| 発生ケース | 内容 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 壁紙の部分的な損傷 | 金具の取り外し時に壁紙を破いてしまった場合など。 | 数千円~2万円程度 |
| 石膏ボードの損傷 | 想定外の力がかかり、ボードが欠けてしまった場合など。 | 1万円~5万円程度 |
| 契約特約違反 | 契約書で壁への穴あけが明確に禁止されていた場合。 | 契約内容による |
退去時のトラブルを避けるためには、入居時の壁の状態を写真で記録しておくこと、そして金具の取り外しは慎重に行うことが重要です。
跡が気になる場合は、前述の通り、補修材で綺麗に補修しておきましょう。
壁美人で後悔しないための正しい知識

- まずは基本となる壁美人の使い方
- 壁美人にニトリの棚を設置する注意点
- 55インチテレビを壁掛けする条件
- ホッチキスの芯は専用品を使うべきか
- 石膏ボード以外の壁に取り付けできる?
- まとめ:壁美人で後悔しないために
まずは基本となる壁美人の使い方
壁美人で後悔しないためには、何よりもまず基本的な使い方をマスターすることが不可欠です。
手順自体は非常にシンプルですが、一つ一つの工程を丁寧に行うことが成功の鍵となります。
1. 壁の種類を確認する
最初にして最も重要なステップです。壁美人は「石膏ボード」専用です。
コンクリートや固い木材の壁には使用できません。
壁を指でコンコンと叩いてみて、軽い空洞音がすれば石膏ボードの可能性が高いです。
画鋲などを目立たない場所に刺してみて、針の先に白い粉が付けば石膏ボードで確定です。
2. 設置場所を決めて印をつける
金具を取り付けたい場所に、水平器などを使って正確に印をつけます。
この時、壁の裏にある下地(柱)の部分を避ける必要があります。
下地センサーを使うのが最も確実ですが、なければ壁を叩いた時の音の違いで判断します。
下地のある場所は、詰まった硬い音がします。
3. 専用フィルムを壁に固定する
金具と壁の間に挟む、半透明のフィルムをマスキングテープなどで壁に仮止めします。
このフィルムには、ホッチキスの芯を打つためのガイド穴が開いています。
4. 180度開くホッチキスで芯を打ち込む
ここが一番のポイントです。必ず180度開くタイプのホッチキスを使用し、ガイド穴に合わせて芯を「最後まで」「まっすぐ」打ち込みます。
1つのガイド穴に、指定された本数の芯を全て打ち込んでください。
途中で曲がってしまった芯は、必ずペンチで抜いて新しい芯を打ち直しましょう。
全ての芯を打ち終えたら、金具を手で軽く揺さぶり、ガタつきがないかを確認します。
しっかりと固定されていれば、取り付け完了です。
この手順を守ることで、壁美人の性能を最大限に引き出すことができます。
壁美人にニトリの棚を設置する注意点
ニトリの「ウォールシェルフ」をはじめとする壁掛け棚は、手軽におしゃれな収納スペースを作れるため人気があります。
これらを壁美人で設置しようと考える方も多いでしょう。
設置自体は可能ですが、いくつか重要な注意点があります。
それは、「棚の自重」と「収納する物の重量」の合計が、使用する壁美人金具の静止耐荷重を絶対に超えないようにすることです。
例えば、ニトリのウォールシェルフ(幅60cm)の重量が約2kgだとします。
これに静止耐荷重6kgの壁美人金具を2つ使って設置した場合、計算上の耐荷重は12kgです。
しかし、ここから棚の自重2kgを引くため、実際に棚に置ける物の重さは10kgまでとなります。
本や食器など、見た目以上に重いものを収納すると、簡単に耐荷重オーバーになる可能性があります。
何を置くかをあらかじめ決めた上で、余裕を持った耐荷重の金具を選ぶことが非常に重要です。
また、棚の奥行きが深い場合、重心が手前に来るため、壁にかかる負荷が大きくなる「てこの原理」が働きます。
奥行きのある棚を設置する場合は、さらに耐荷重に余裕を持たせるか、より強力な金具を選ぶことを検討してください。
55インチテレビを壁掛けする条件
55インチクラスの大型テレビを壁掛けする場合、「テレビセッター壁美人」のようなテレビ専用の製品が必須となります。
通常のフックタイプの壁美人は絶対に使用しないでください。
まず確認すべきは、テレビ本体の重量と、背面にあるネジ穴の規格(VESA規格)です。
これらが、使用したいテレビセッター壁美人の対応範囲内にあるかを確認します。
55インチテレビの重さは、モデルにもよりますがおよそ15kg~20kgが一般的です。
購入を検討しているテレビセッターが、この重量に対応しているかを必ずチェックしましょう。
次に、設置する壁の強度です。55インチテレビともなると、かなりの負荷が壁の一点にかかります。
石膏ボードの厚みが十分にあるか(通常は12.5mm厚が望ましい)、壁がたわんだりしていないかを目視で確認してください。
以下に、一般的な条件をまとめます。
| チェック項目 | 条件・確認事項 |
|---|---|
| 製品選定 | 必ず「テレビセッター壁美人」シリーズから選ぶ |
| テレビの重量 | テレビの重量が、製品の対応重量内であること |
| VESA規格 | テレビ背面のネジ穴の間隔が、製品の対応VESA規格と一致すること |
| 壁の種類 | 設置する壁が石膏ボードであること(下地のない部分) |
| 金具の数 | 製品の指示に従い、十分な数の金具(受け金具)を設置すること |
これらの条件をすべてクリアして初めて、55インチテレビを安全に壁掛けできます。少しでも不安な点があれば、専門業者への依頼も検討するのが賢明です。
ホッチキスの芯は専用品を使うべきか
壁美人には、専用のホッチキス芯が付属または別売りされています。
一般的な文房具の芯と比べて少し価格が高いため、「普通の芯でも代用できるのでは?」と考える方もいるかもしれません。
結論として、必ず専用の芯、もしくは推奨されているステンレス製の芯を使用してください。その理由は、素材と耐久性にあります。
一般的なホッチキス芯の多くは鉄製です。
鉄は湿気に弱く、時間が経つと錆びてしまう可能性があります。
芯が錆びると強度が低下し、最悪の場合、突然折れて落下の原因になりかねません。
特に、キッチン周りや窓際など、湿気が多い場所に設置する場合は注意が必要です。
壁美人専用の芯はステンレス製で作られています。
ステンレスは非常に錆びにくく、長期間にわたって強度を維持できるため、テレビや棚などの重量物を安心して支えることができます。
数百円の差を惜しんだ結果、何万円もするテレビを危険に晒すのは賢明ではありません。
安全のため、そして大切な家具や家電を守るためにも、芯は必ず指定されたものを使用しましょう。
石膏ボード以外の壁に取り付けできる?
この質問に対する答えは、明確に「できません」です。
壁美人は、その仕組み全体が石膏ボードの特性を活かすことを前提に設計されています。
ホッチキスの芯が石膏の中でクロスし、摩擦によって固定されることで強度を生み出しています。
以下の様な壁には取り付けができないため、注意が必要です。
- コンクリート壁・レンガ壁:ホッチキスの芯が全く刺さりません。
- 土壁・砂壁:もろいため、芯を打ち込んでもすぐに抜けてしまいます。
- 固い木材の壁(合板など):芯が奥まで入らず、十分な強度が確保できません。
- 吸音ボード・ロックウール吸音板:柔らかすぎるため、重さに耐えられません。
例外として、厚さ5mm程度の薄いベニヤ板の下が石膏ボードである場合は、ベニヤ板を貫通して石膏ボードに固定できる可能性があります。
ただし、これはメーカーが推奨する方法ではないため、自己責任の範囲で行う必要があります。
自宅の壁がどの種類かわからない場合は、絶対に自己判断で取り付けないでください。
ハウスメーカーや管理会社に問い合わせるなどして、壁の材質を正確に把握することが、安全な設置のための大前提となります。
まとめ:壁美人で後悔しないために
最後に、この記事の要点をリスト形式でまとめます。
壁美人を安全・快適に使いこなすためのチェックリストとしてご活用ください。
- 壁美人の落下原因の多くは使用方法の誤り
- 静止耐荷重は厳守し余裕を持たせることが重要
- 棚を設置する場合は収納する物の重さも計算に入れる
- テレビの設置には必ずテレビ専用の製品を使用する
- テレビの重量とVESA規格が製品に対応しているか確認する
- 地震対策として落下防止ワイヤーの併用を推奨
- 壁美人の跡は画鋲より小さく賃貸でも問題になりにくい
- ただし賃貸契約書で壁の穴あけが禁止されていないか確認は必要
- 退去時に備え市販の補修材で穴を埋めるとより安心
- 使い方の基本は壁の種類確認から始まる
- 壁美人は石膏ボード専用の製品であると認識する
- ホッチキスは180度開くタイプを使い芯はまっすぐ最後まで打つ
- 安全のためにホッチキスの芯は錆びにくいステンレス製を選ぶ
- コンクリートや土壁など石膏ボード以外の壁には使用不可
- 正しい知識と手順を守れば壁美人は非常に便利なアイテム